11月22に開催された「UX Japan Forum 2015」に、UX Hiroshimaコミュニティより参加してきましたのでレポートします。

会場は九州産業大学。駅から大学の入り口はすぐでした。キャンパスに入ると会場への案内が。UX Fukuoka のチームの会場準備です。さすが UX を高めてくれます。この案内板で広い構内の中の、会場まで迷うことなく到着できました。

九州産業大学

案内板が会場までのUXを高めてくれる

 

浅野先生オープニングトーク

浅野先生からは、UX Japan Forumとは何か?からご挨拶。

UX Japan Forumとは

UXデザインの理解を深めるコミュニティを全国に立ち上げようという思いで立ち上げられた全国UXコミュニティ。全国各地にコミュニティがある。UX Japan Forumは今年で2回目。日本でのUX認知はまだまだこれからなので、コミュニティで学ぶ仲間を求めています。

 

UXデザインで最も重要な「調査」を再認識する

その後、今回のテーマである「サイレントニーズを探る」という趣旨をご説明。UXデザインの基本である「調査」の重要性や意味についての意義を講義頂きました。近年のUXDというワードを語る時、この調査の部分は軽んじられている傾向にあるが、調査の質はその後の全ての工程の質を左右する重要な工程であるということで、今回改めて UX Japan Forum で「サイレントニーズ」というテーマに。

 

セッション開始

今回のスピーカーの方々はIA(Information Architecture:情報設計)、HCD、UXの分野で日本を牽引されている方々ばかりの豪華なラインナップ。坂田さん(リクルート)、坂本さん(ネットイヤー)、平野さん(アクアリング・Sakae UX)、村越さん(グッドパッチ)。このメンバーが集まるイベントもそうそうないですね。

 

坂田さん

「サイレントマイノリティ」

坂田さん・サイレントマイノリティ

Silent Minority(サイレント・マイノリティ) from Kazumichi Mario Sakata

ユーザーの声にならない声をどう向き合うか、というお話で、IDEOのオンラインスクールで学んだ経験の中から、ユーザーの声をどのように取り入れるのかIDEO流の学びを通じて、本当に聞くべき声とは何か?を伝えて頂きました。

 

ユーザーに未来を聞くな

モノづくりやサービス開発において、より良いものを作るために、ユーザーの意見を取り入れることは重要です。ペルソナに対してユーザーインタビューを実施するというのは一般的な手法ですが、そのインタビューの中で一番やってはいけないことがあります。それは「ユーザーに未来を聞く」ということ。

本当に汲み取るべき声とは、ユーザーから出てきた意見そのものではなく(それ自体はFACTとして重要ですが)、そのユーザーの声の背景にある体験であり、文脈を汲み取ること、それがユーザーの体験からくる「ユーザーの声なき声」ということでした。ユーザーの声そのものは、エッセンスの一つとして受け止め、さらにその奥の「声の背景にある声を」理解することが大切だと改めて確認できました。

そこで重要になるのが「ユーザーへの共感」の深さ。言葉のコミュニケーション以外にも、五感を駆使してユーザーと対話しユーザーを体感することが重要だということを指摘されていました。僕自身も「主観的共感の重要性」ということを沖縄でお話したのですが、先鋭的なIDEOでもユーザーの共感性を重要視している点は同じ考えなんだなと再認識できました。

ギャップを意識してみる

その中でも面白い視点だなと思ったのが「ギャップを意識してみる」ということ。インタビュー対象者の方が意外な物を持っていたりすると、そこを切り口にして掘り下げると、本質的な洞察が得られる場合が多いという点はユニークな視点でした。

 

坂本さん

「カスタマージャーニーマップ・エクササイズ」

 

坂本さん

カスタマージャーニーマップについても、私達UXを提供する側が「とりあえずやる」という、やること自体が目的化しがちですが、実施することで何が達成されるのか、どのように体系化してプロジェクトに落とし込みをするのかという、ジャーニーマップの活用法を教えて頂きました。

 

地図ではなくコンパスを持て

共有禁止のドキュメント類のご紹介は、そのレベルの高さにビンビンきました。カスタマージャーニーマップを起点に、その前後のプロセスなども含めて、実案件レベルでの手法などを解説して頂きました。カスタマージャーニーマップを実施する前のペルソナ作りから、インタビュー実施、そしてカスタマージャーニーマップ実施後のシナリオ作成、UXフロー作成、画面フロー作成など、「UXの実務の教科書」とも言えるような、目からうろこの貴重な内容でした。

これらを実施する目的をしっかり定め、実施することが目的ではなくその後の施策をどう実現していくのか「地図ではなくコンパスを持て」という意図を通じて伝えて頂きました。

 

開発中のUX Recipeがアツい!

坂本さんが現在開発中の、カスタマージャーニーマップが簡単にオンラインで作成できるツール、「UX Recipe」これはかなりアツいツールです。ある程度フォーマット化されたカードを元に、画面上でカスタマージャーニーマップを作成することができます。すぐにでも使いたいです。

そういえば以前坂本さんが「ゴールドラッシュの時はスコップを売れ」的なことをつぶやかれていたような気がしましたがこれがUXラッシュ時代の「スコップ」なんですね。

 

平野さん

「UXはじめの一歩」

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UXやユーザー体験の向上という言葉を良くWebの現場でも聞かれるようになりました。しかし、UXを取り入れようとした時、どのような所から始めれば良いかとなるとハードルが高いと感じる方が多いのではないでしょうか。

そういう方々にとって、どこから始めれば良いのかという切り口を、平野さんの会社での事例を交えてご紹介頂きました。

サイトマップだけでも膨大になるような大型案件や、情報コンテンツ比較サイトといった毛色の違った案件での情報設計、ユーザーエクスペリエンス施策やIA的なアプローチから、UXのアプローチを織り交ぜつつ、大きな組織でのプロジェクトに導入した話を実案件ベースでご紹介。

実際に苦戦したポイントを細かく解説していただき、受託制作に携わる人にとってわかりやすいお話でした。UXを導入するには、自社内の体制と同時に、プロジェクト全体の体制つくりがとても大事だなということがわかりました。

プロジェクトをクライアントと共有する

大きな案件でのプロジェクトの場合は、クライアントの社内にプロジェクトルームを借りて、チーム全員がその部屋で制作をすすめることもあるようで、その中で、ペルソナの作りこみやコミュニケーションを重ねることで、自然とプロジェクト全体のコンテキストが共有されたのが良かった、ということもおっしゃっていて、そうなるような場を作りクライアントもしっかり巻き込みできるような状況を作ったというところも面白いポイントでした。できる状況であればやってみたいですね。UXのプロセスは、UXに対する理解がない場合は、本当に何をやっているのかわからない点もあると思うので、壁一面に付箋がはられていたり、ペルソナなどのボードが目に見える所にあるというのは、それだけでもプロセスの質が変わるのではないかなと思いました。

 

村越さん

「対話から始まるデザインプロセス」

村越さん 対話から始まるデザインプロセス

対話からはじまるデザインプロセス:UX Japan Forum2015 from Satoru Murakoshi

プロジェクトの成功、失敗の要因とは何なのか。その要因について、コミュニをケーションの質と量、そしてチーム全体の熱量などを重要視しているという、グッドパッチのチームビルディングの取り組みと知見をご紹介頂きました。

営利企業としては「コミュニケーションの量と質の向上」を語る際、企業側が求める「効率化」と相反するテーマとなり、コミュニケーションの量を扱うとき、まるで無駄なコストだとして切り捨てられてしまいがちですが、グッドパッチではそうではないようです。

村越さんご自身が今までのキャリアの中での経験を踏まえて「きちんとコミュニケーションし熱量を持ったプロセスを取らなければ、結果として後々に色々なコストが余計にかかる」という点を、クライアントにも自ら説明されたりするようで、そうするとクライアントも同じチームとして腹をくくってくれるようになり、関係性が高まり良いプロダクトを作ることに繋がるのだそうです。

 

偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる

良いチーム作りを大切にするというカルチャーを醸成する為に、コミュニケーション不全に陥ることにならないよう日々社員の方々同士が交流を図れるような仕組みや、インタビューを通じて自分たちのステークホルダーなどを可視化し壁に貼るなど、デザイン思考などのアプローチを日々実践しつつ、相互理解が深まるようなしくみそのものをデザインしているそうです。

btraxの潮流を持つ会社ということもあり、イノベーションアプローチを随所にさり気なく取り入れ洗練されている印象を受けました。

より良い結果を求めるとき、まずは行動そのものを見つめ直そうとしますが、そうではなくまずは関係性を高めるというポイントに重きを置くという点は「Core Theory of Success」に通じます。

 

言語コミュニケーションを通じて非言語領域を汲み取る

クライアントとの関わりもユニークで、プロジェクトのキックオフにかなりの重きを置き、キックオフをしっかりデザインされている点。アイスブレイクに「愛を語る」などユニークな手法もガンガン取り入れていることに関心しました。

ビジネスにおける一般的なコミュニケーション手法とあわせて、ユニークなコミュニケーションを随所に散りばめ、文化や思想、背景、感情など、非言語のコミュニケーションの質を高めているなと感じました。

サイレントニーズの汲み取り方というのも、言語ベースのコミュニケーションからいかに非言語な情報を汲み取れるのかがネックになるのかなと。この方法は、僕自身もいつも気にかけている所になるので、僕自身のアプローチにも自信が持てたようなそんなセッションでした。

懇親会などでお話を聞いていると、「村越さんの話に勇気づけられた」「グッと来ました」という感想をシェアされる方が多く、村越さんのトーン自体が、他の人に自然とエンパワーを与えるような在り方なのかな、とも個人的に感じました。

 

その他の点では、海外チームとのレビューやカジュアルレビューなどもできるようなデザインをしている所が先進的だなと感じました。坂田さんもそうですが、いかにプロダクトを良くするのか、構造的な全体最適の視点から組織そのものをデザインしていくという所に、UXデザインの先の世界があるのかなぁとも感じました。UXデザイナーってこういう広義なデザインをされてる方の事を指すんですよね。

 

 パネルディスカッション

パネルディスカッション

「サイレントニーズ」というテーマになぞらえて、「この会場の人たちが聞きたいと思う『サイレントニーズを考えて話をしてください』という方式でやります」という、浅野先生らしい話題の振り方で、パネルディスカッションがスタート。

みなさんのトークの共通の話題としては、「組織の中でどのようにUXを実施するのか?」という内容を中心に、パネルディスカッションが進みました。

坂本さんからは、「組織の中に置かれている状況をどうにか打破したくて、UXをそのヒントとして学びに来ているのでは?」という鋭い指摘があり、みなさんそれぞれのご意見を述べてもらいました。

村越さんの、「自分にできることを少しでも組織の中でプレゼンテーションし、その組織に合うやり方を見つけ、組織の中で共感できる仲間を増やし、その輪を広げていく」という、ご自身がそうされてきたんだろうなぁという実感を伴った説得力のある意見が印象に残っています。

パネルディスカッション村越さん

 

未来を切り開く為のUX

浅野先生のまとめ。今日のサイレントニーズとしては「自分の未来を切り開く為の何かがUXにあると感じてきているのではないか?」とのこと。

未来が読めない不確実性が高い現代の時代の流れの中において、「UXを学びたい」というモチベーションの背景には、時代に左右されない本質的な手法として再認識し、その手法を習得したいという想いを、私達は感じているのかもしれません。

今回は、常葉大学、九産大の学生の方々による、「リアルタイムドキュメンテーション」も行われ、懇親会会場に貼りだされました。その日の内容を振り返りをしながらの懇親会。

リアルタイムドキュメンテーション

途中のコーヒーブレイクや、懇親会も楽しかったですね。

懇親会 浅野先生とUX Fukuoka のヨシカワさん

 

UX HIROSHIMAも、来年からまた活動していきたいと思います。

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UX HIROSHIMA:薬師神